中安田に鎮座する安田稲荷神社の例大祭について紹介します。安田郷4ヶ村(西安田・中安田・東安田・西脇市羽安町)の総氏神です。宵宮夜に屋台の宮入りが行われ、屋台はそのまま境内に据え置かれ一泊し、本宮午後に下向します。播州広しといえども、他ではみることのできない風習が受け継がれています。神社の世話人である「とう(頭・当・祷)人」の引き継ぎである当神事(いわゆる、”おとう”)を中心に祭事が進められ、氏子各地区にとっては最も大切な年中行事と位置づけられています。屋台の宮入り・下向に際しては、旧中町ではみられない多くの屋台唄・舁き唄が継承されており、宮入りでの天下泰平や参道での唄、下向での祇園囃子(伊勢音頭)など、電飾姿の屋台と相まって独特の風情を醸し出しています。
安田稲荷神社は元来、西安田に鎮座していたことから、西安田は氏子4ヶ村の中でも神事において特別な役割を担われます。近年、屋台の改修が繰り返され、一層きらびやかな姿になりました。
かつて姫路白浜で名高い屋台製作所として知られた麦本製作所が請け負い新調された屋台です。水切りや高欄の金具に加え、水引幕の刺繍は特に精巧な意匠となっています。
赤い布団屋根と白黒の袋綱の伝統を受け継ぐ東安田屋台。花岡正一と経助が手がけた狭間彫刻は豪快で躍動感に溢れます。高欄金具の透かし彫りなど、細部まで手が込んだ造りとなっています。
西脇市から杉原川を渡って宮入りする羽安町屋台。螺鈿細工と虫喰い塗りで飾られた高欄や、二枚の金属板の透かし彫りで彩られた井筒金具など、他所にはない細やかな意匠が取り入れられています。